ぷり子のぷりぷりダイアリー

男もすなる日記といふものを、女(子力が高い男子)もしてみむとてするなり。 いとうつくしきふでのはなしなぞしたる。

池波正太郎が愛した彫漆万年筆は何故失敗したのか

趣味の文具箱33号の表紙裏に広告が出されていた、「池波正太郎が愛した彫漆万年筆」という商品、つい最近までクラウドファンディング資金集めがされていたんですが、募集期間が終了したとのことで結果を見に行きました。

定価32万円の万年筆、クラウドファンディングだとなんと20万円でゲットできるとのことでしたが集まった金額はわずか25万円、外野の私が言うのもなんなのですが「惨敗」だったと言わざるを得ないと思います。
実はこの広告が趣味の文具箱に掲載される前から、この商品については把握していて買いたいか買いたくないかという話とは別で「どれくらいの金額が集まるか」に興味があって甘暖かく見守っておりました。
今回の惨敗の理由は以下のような点にあると私は考えます。

1.万年筆と池波先生との結びつきが不明瞭
夏目漱石といえばオノト、開高健といえば149みたいにしっかりと万年筆好きの中にイメージがついていると「欲しい!」と思えるんでしょうが、今回の軸は「資料館に保管されていた万年筆」というだけで、インパクトに欠けると言わざるを得ない。

2.値段設定がはっきりしない
公式な値段が32万円なのにCFだと20万円で買える!お得!と消費者が思ってくれると考えたのでしょうが、私は「こんなに値段が違うと逆に怪しいよ。ラジオショッピングかよ!」と思ってしまいました。万年筆って嗜好品としての意味合いが強いので、こういう怪しげなところがあるとイメージダウンだと思います。

3.値段がベラボーに高い
万年筆ブームと言われていますが、あくまでもそれは万年筆を使う裾野が広がっただけで、「万年筆が最優先」という層はまだそれ程増えていない気がします。
そんな市場で20万円をドンッ!
ライトユーザーはこの商品を選びませんし、一方、ヘビーユーザーは目が肥えているので「これだけのお金があれば他の万年筆買うわ」って思ってしまいます。どっちの層からもそっぽを向かれてしまったのですね。
その点、日本橋高島屋のntさんオリジナルの万年筆なんかは、顧客の層や、購入可能な価格、特殊ペン先を少量用意する等、「わかってるなー」としみじみ感じます。
立案者の方はもう少しマーケティング調査をしておけば良かったのではないかと思います。

4.宣伝周知が足りない
趣味の文具箱以外の広告を見たことがありません。存在を知らなければ欲しいとも思えません。万年筆好きは自分達で調べて、買ってくれるだろうという気持ちがあったのかもしれませんが、すこし甘えすぎだったと思います。

今回の一件で、「オリジナル万年筆を製作する際に気を付けなければならないこと」が分かった気がします。
私が島根オリジナル万年筆「プロギアスリムミニ“松江城”」を作る時にはこのようなことがないようしっかりと準備をしなければと褌を締め直したぷり子なのでした。